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Cesare Picco: Light Line [Jazz]

Jazz / 2008.02.03
2007年、ぼくは、100枚以上の新譜を買ったようです。
我ながら心外なのですが、iTunesによると、どうもそういうことなのです。
お金がたまらないのはそういうわけか、と妙に納得したりするのですが、
ただ膝を打つだけでは価値がありません。
新年もひと月が過ぎましたし、ここらでひとつ、
2007年の個人的名盤をピックアップしてみようと思います。

Cesare Picco "Light Line"。

イタリア人のジャズピアニストです。
クラシックの素養もあるらしく、たいへんリリカルで端正なピアノを弾きます。
このアルバムには、自身のプログラミングによる隠し味的なシーケンスも含まれていますが、
基本的には、ベースとドラムを加えたトリオです。
各人、抜きと差しをわきまえた絶妙な演奏でして、言葉で表現するのはなかなか難しいのですが、
ひんやりとした、静寂感のある、しっとりと、美しい、蝋燭のような、
といった形容詞が思い浮かびます。

この雰囲気を、この雰囲気たらしめているのは、生演奏のアンサンブルのみではありません。
Taketo Gohara氏によるライブエフェクト。
空間系を主とした音響処理が、秀逸な素材を殺すことなく、
それでいて、実に効果的に織り込まれているのです。
これが素晴らしい。
例えば、1曲目、"L'orolgio"の冒頭。
一打の控えめなハイハットが、マイクを通じて、マルチディレイを咬んだ卓に通されます。
ハイハットは粉々に砕け散り、まるでダイヤモンドダストのように、
チリチリチリと美しく降り注ぎます。
この繊細なイントロの数秒だけで、このアルバムは名盤であると、すでに確信できるのです。
ぼくはジャズが好きでよく聴きますが、これほどまでにユニークで上質な作品は、他に知りません。
ずっと探し続けているのですが、見つからないのです。

思い出があります。
昨年の夏の終わり、札幌。
絵空事の将来が、超高速で空回りしていました。
生命の進退を賭けたドラッグレース、錯綜する思考・・・
ぼくは、少し落ち着こうと、一人で夜の中島公園に向かいました。
iPodを片手に持ち、しんとした路を通り抜けて、池のほとりのベンチに腰掛けました。
070831中島公園
すすきのの裏側の灯りが、控えめだけど凛として、透明な夜空に映えています。
手のひらを返すように涼しくなった晩夏の風が、半袖のシャツに染み込みます。
匂いはすでに、秋でした。
しんみりとした解放感に包まれながら、このアルバムを再生した瞬間。
それまでの五感は、さらに露わになり、一丸となって、ぼくを包み込みました。
呆然としました。
本当に美しかった。
ほんの数十分の出来事ですが、生涯忘れることはないでしょう。

あの夏以来半年間、僕はこのアルバムを、毎日のように聴いています。
それでいて、まったく飽きることがなく、いつ聴いても新鮮です。
昨今の、玉手箱のように多彩で刺激的な電子音に慣れた耳でも、
決して退屈せず、じっと耳を傾けられる作品です。
普段ジャズを聴かない方。特に、新しい音楽が好きな方。
是非おすすめです。
安いクラブジャズでもなく、薄っぺらなスムースジャズでもなく、難解な○○派とかでもなく、
ジャズが進むべき未来を確信できる、厚みのある一枚です。

こちらでさわりだけ聴くことができます。

―iTunesをお使いの方:
http://phobos.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewAlbum?id=256545538&s=143462

―その他の方(WINのみ):
http://mora.jp/package/80328021/FIN-020/

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